親知らずを抜きたいけど、怖くてできない。虫歯治療はできるけど、親知らずの抜歯などの外科的な治療は、怖くてできない。そんな方々への解決方法をお伝えします。
親知らずの抜歯が怖い方へ【笑気麻酔・静脈内鎮静法・全身麻酔】
まず、確認しておきたいのが、親知らずの抜歯の時の【怖さの原因】は何か?ということです。
【怖さの原因】別に解決方法をみていきましょう。
痛そうで怖い
➡痛みは、痛み止めの注射によりコントロールします。十分な鎮痛麻酔を行うことで、術中の痛みはほぼなくすことができます。ただ、麻酔する前から親知らずが痛む場合、炎症が起きている場合は、鎮痛麻酔が効きにくいことがあります。ですので、炎症が落ち着いているときに、抜歯することをおすすめします。
また、抜歯後は、ロキソニンのような痛み止めの薬を飲むことである程度は痛みをコントロールすることができます。
豆知識として、痛みがでてから痛み止めの薬を飲むのではなく、痛みがでる前に飲んだほうが、薬は効果的に作用しますので知っておいてください。
腫れるのが怖い
➡術後の腫れについては、手術の侵襲度合い(歯の埋まり具合、方向、骨を削るかどうか等)によっても違いますし、患者さんの年齢や体調などの状況によってもかなり変わります。
基本的には、腫れるものだという認識をした上で、抜歯に臨むのがよいかと思います。
まれに、歯科医院によっては、微量のステロイド薬を使用することで、腫れを抑えることもやってくれてたりします。ステロイドは、長期投与しなければ、副作用の心配はそれほどいりません。ただし、投与している歯科医院はほとんどないかと思います。
直接の腫れとは関係ないかもしれませんが、ロキソニンのような痛み止めの薬には、炎症を抑える効果もあるとされていますので、痛み止めの薬を飲むことも腫れのコントロールには役立つかもしれません。
どちらにせよ、腫れのコントロールは難しいので、腫れることは覚悟しておいたほうがよいかと思います。
とにかく怖い
➡はい、とにかく怖い、このような方もたくさんいらっしゃいます。とにかく怖い場合、【怖いまま頑張る】ことが必要となります。
ですが、頑張るだけだと何の解決策も提示していませんね。
ですので、頑張るだけではクリアできないくらい怖さが強い方には、次からお伝えする3つの方法を検討ください。
①笑気麻酔を使って親知らずを抜歯する。
②静脈内鎮静法を使って親知らずを抜歯する。
③全身麻酔を使って親知らずを抜歯する。
では、一つ一つ説明していきます。
①笑気麻酔を使って親知らずを抜歯する。
笑気麻酔、正式名称は笑気吸入鎮静法という鎮静方法があります。怖さを軽減するリラックス麻酔の一つです。
笑気吸入鎮静法とは、笑気ガス(亜鉛化窒素ガス)を鼻から吸引しておこなう鎮静法で、「笑気麻酔」とも呼ばれます。笑気ガスを吸引することで不安や恐怖心などを軽減させるのが特徴です。
治療が終わると数分で笑気ガスが体外へ排出され、しばらく経つと完全に目覚めます。なお、笑気ガスは体内で分解されることなくそのまま排出され、副作用の報告もほとんどありません。
ただし、効果は個人差が大きくでるので、怖さがそれほど軽減しない患者さんもいます。
笑気麻酔には、怖さの軽減と、若干の痛みの軽減効果もあるのが特徴です。笑気麻酔を導入しているクリニックは少ないですが、保険適用もできますので、ぜひ問い合わせてみてください。
②静脈内鎮静法を使って親知らずを抜歯する。
静脈内鎮静法とは、点滴によって腕の静脈から薬を注入しておこなう鎮静法で、「セデーション」とも呼ばれます。鎮静薬を注入することで不安や恐怖心を軽減させ、時間の感覚が薄れたような状態にさせるのが特徴です。
静脈内鎮静法をおこなうことで、患者さんはうっすらとした意識のなかで眠っているような状態になるため、とてもリラックスして歯科治療を受けることができます。治療が終わった後も、薬に含まれる健忘効果により治療中のことはほとんど覚えていません。便宜的、中度歯科恐怖症の方と記載していますが、重度歯科恐怖症の方にも使えます。安全に治療を行うためには、治療を行う歯科医師に加え、歯科麻酔医が必要です。
全身麻酔とは違い、完全に意識がなくなるわけでも、自発呼吸がなくなるわけでもありません。入院も必要なく、頻回に活用できるのが特徴です。
投与する薬の量をコントロールすることで、ほとんどの患者さんに深い鎮静効果を得ることができます。ただ、静脈内鎮静法は歯科麻酔に精通した歯科医師が必要です。保険のルール上は、親知らずの抜歯時の静脈内鎮静法は保険適用でも可能ですが、多くの開業歯科医院では、歯科麻酔医が常駐していることは少ないので、大学病院でないと保険適用で状若内鎮静法が行えないことが多いです。
ただ、歯科恐怖症学会推奨クリニックであるマリコ歯科クリニック(東京都・代々木)であれば、口腔外科を専門にする歯科医師と歯科麻酔を専門にする歯科医師が勤務しているので、ほとんどの場合は大学病院に紹介することなく、保険適用で静脈内鎮静法を使用し、埋伏歯や横向きに生えている親知らずの抜歯まで行うことができます。
静脈内鎮静法を保険適用できる歯科医院を探している患者さんが非常に多いので、過去に、このようなブログ記事を書いています。ぜひ、参考にしてください。
また、笑気麻酔と静脈内鎮静法の違いについてはこちらの動画も合わせてご覧下さい。
③全身麻酔を使って親知らずを抜歯する。
全身麻酔は、麻酔薬を静脈内に投与し全身の痛み、感覚を麻痺させる方法です。「歯の治療で全身麻酔!?」と驚かれる方も多いのですが、実は、かなり多くの患者さんが、親知らずの抜歯のために全身麻酔を行っています。
全身麻酔は、完全に患者さんの意識を取り除き、呼吸も人口呼吸機を使用してコントロールします。脳の活動を抑えるので、静脈内鎮静法よりもさらに眠りを深くして、苦痛を全く感じない状態で治療を行うことができます。全身麻酔中は訓練された歯科麻酔医が、血圧、心拍数、心電図、酸素飽和度、体温など、常に全身状態の変化を観察しながら、それらの変化に対応した処置がとれるように全身管理を行う必要があります。
全身麻酔での親知らずの抜歯は、歯科治療に伴う恐怖感や不快感を全く感じることなく、完全に意識のない状態で治療を終えることができます。障害者や小児など、治療中に動いてしまい、安全に治療を行えない方や、歯科治療に対して恐怖心が強い方が対象となります。また、親知らずを同日に複数本抜歯するような時や、親知らずがとても深いところに生えていたり、抜歯の難易度が非常に高い場合に使われます。入院する場合と、日帰りする場合があります。
入院管理をすることで、抜歯後に出血が止まらない、腫れが大きい場合など、術後の管理を丁寧に行うことができるのがメリットです。
全身麻酔と聞くと、かなり大げさに聞こえるかもしれませんが、かなり安全に親知らずの抜歯を行うことができます。お仕事されている方は2-3日は仕事を休む必要がありますが、安全に抜歯を行うための方法の一つです。
と、このように、今回は、
親知らずの抜歯が怖い方へ【笑気麻酔・静脈内鎮静法・全身麻酔】というテーマでブログを書かせていただきました。笑気麻酔・静脈内鎮静法・全身麻酔といったあまり知られていない治療方法について記載しましたので、ぜひ参考にしてください。患者さん自身がしっかりと予備知識をもって歯科医院に行くことで、様々な相談をすることができると思います。
このブログでは、このように、歯科治療が怖い、苦手といった患者さんに向けて有益な情報を発信しております。ぜひぜひ今度もチェックしてみてください。
・歯科医師
・歯科恐怖症学会専門医