歯医者さんへの扉を開くことは、時に大きな勇気がいることですよね。特に「親知らずの抜歯」と聞くと、その不安がさらに増幅してしまう方も少なくありません。痛いのではないか、怖いのではないか、と震えるような気持ちになってしまうのは、決してあなただけではないのです。
- 歯科恐怖症の方が抱える不安や、それが親知らずの治療に及ぼす影響について解説します。
- 親知らずの抜歯を円滑にする「笑気麻酔(笑気吸入鎮静法)」の具体的な作用とメリット・デメリットを提示します。
- あなたにとって妥当な治療法を見極めるための鍵となるポイントをお伝えします。
親知らずの抜歯が怖い方にとって、「笑気麻酔」は心強い味方になってくれます。笑気麻酔を利用することで、半分眠っているようなリラックスした状態で治療を進行できます。まずは「怖い」という気持ちを共有できる医療機関を探すことが、肝要なのです。

1. 歯科治療への不安〜「親知らず」の悩みが深刻な問題へ〜
1-1. 歯科恐怖症の現状と影響・・・放置は禁物です
「歯の治療が怖い」「ドリルの音が苦手」という感情は、多くの方が抱えるものです。誰でも持っている感情です。しかし、その恐怖心が強すぎて、治療が必要だとわかっているのに歯医者から足が遠のく状態を「歯科恐怖症」と呼称します。
親知らずは、痛みや腫れ、周囲の歯への悪影響など、さまざまな問題を引き起こします。放置すればするほど、治療が複雑化し、結果としてより大きな恐怖を伴うことになりかねません。これは、心の健康にも悪影響を及ぼします。
1-2. 適切な治療の選択肢を探る〜笑気麻酔という解決策〜
「怖いけれど、親知らずを抜かなければならない」・・・そんなジレンマを抱えている方のために、歯科麻酔の技術は進歩しています。治療の不安を軽減するための様々な「鎮静法」が確立されているのです。中でも、笑気麻酔は多くの歯科医院で導入されている、優先度が高い選択肢と言えるでしょう。
2. 親知らずの抜歯を助ける「笑気麻酔」と鎮静法〜治療の選択肢〜
2-1. リラックスできる魔法のガス「笑気麻酔(笑気吸入鎮静法)」
笑気麻酔とは、正式には「笑気吸入鎮静法」と称されます。これは、ほんのり甘い香りのする「笑気ガス」を鼻から吸い込むことで、意識を保ちながらリラックス状態を創出する治療法です。
「半分眠っているような、お酒に酔ったような心地よい感覚」になることが多く、治療中の痛みや不快感を軽減する鍵になります。親知らずの抜歯のように、緊張しやすい治療で特に役に立ちます。
2-2. さらに安心感を高める「静脈内鎮静法」
笑気麻酔よりもさらに深い鎮静を求めている方には、「静脈内鎮静法」という選択肢があります。点滴によって鎮静薬を注入し、ウトウトと眠っているような状態で治療を遂行します。まるで夢を見ているようです。
3. 笑気麻酔と静脈内鎮静法のメリット・デメリット
3-1. 笑気麻酔(笑気吸入鎮静法)のメリット・デメリット
| 項目 | メリット | デメリット |
| 笑気麻酔 | 安全性が高い/意識が維持される/回復が早い/比較的安価 | 効果は比較的穏やか/鼻呼吸が必要/深い恐怖症には不向きな場合がある |
3-2. 静脈内鎮静法のメリット・デメリット
| 項目 | メリット | デメリット |
| 静脈内鎮静法 | 強い恐怖感の消失/治療の記憶がほとんど残らない/全身管理が可能 | 専門医の配置が必須/費用が自由診療になることが多い/治療後の安静時間が必要 |
4. 安心・安全な治療のために肝要なこと
歯科治療、特に親知らずの抜歯においては、事前の「術前評価」が極めて重要になります。患者さんの既往歴や全身状態を詳細に把握することで、使用する笑気麻酔の濃度や治療計画を個々に最適化します。
格安でも術前評価を徹底して良好な経過を得た例も存在します。ただし、事前の検査や問診は優先度が高いです。
また、笑気麻酔や静脈内鎮静法は、基本的に自費診療(自由診療)になることがあります。そのため、治療を開始する前に、費用、回数、治療のリスクや副作用については、クリニックで必ず説明を受けてください。
5. 親知らずと笑気麻酔に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 笑気麻酔はどのような治療で利用できますか?
A. 笑気麻酔は、親知らずの抜歯のほか、歯石取りや型取りなど、患者さんが不安を感じやすいあらゆる治療で適用可能です。
Q2. 笑気麻酔中に意識は本当になくなりますか?
A. いいえ、意識はきちんと保たれています。完全に眠ってしまうのではなく、リラックスした状態で、呼びかけには応答できます。ご安心ください。
Q3. 親知らずを抜歯した後、笑気麻酔の影響はいつまで残りますか?
A. 笑気麻酔はすぐに体外に排出されるため、治療後数分で覚醒し、普段の状態に戻るのが特徴です。
Q4. 親知らずが横に生えていても笑気麻酔で抜歯できますか?
A. 笑気麻酔は不安を和らげるための補助手段です。親知らずの生え方に関わらず利用できますが、抜歯の難易度によっては、静脈内鎮静法がより妥当な場合もあります。
Q5. 治療を途中でやめることは可能ですか?
A. はい、もちろんです。笑気麻酔はコントロールが容易なため、患者さんの意志でいつでも中止できます。

歯科治療への一歩は、特に不安を抱える方にとって、重い一歩かもしれません。しかし、親知らずの放置は様々なリスクを招きます。私たちは、笑気麻酔をはじめとする鎮静法を駆使し、「怖い」という感情を最小限に抑えることに尽力しています。
「まずは一歩踏み出して、医療機関を受診ください。」あなたの不安に寄り添うことから、確かな治療は始まるのです。
著者情報
渡辺 敏光
略歴
昭和大学卒業後、インプラント/歯周病専門クリニックで研修を積む。その後、昭和大学歯科病院 歯科麻酔科に入局し、全身麻酔、静脈内鎮静法、静脈麻酔、笑気吸入鎮静法などを実施。鎮静法を用いた安心安全な歯科治療に尽力しています。
所属学会等
- 日本歯科麻酔学会 登録医
- 歯科恐怖症学会 専門医
- 顕微鏡歯科学会
- 日本障害者歯科学会
- 日本歯周病学会

・歯科医師
・歯科恐怖症学会専門医
・マリコ歯科クリニック 副院長
