
静脈内鎮静法を受けたいと思っても、どこで受けられるのかがわからない。検索すると多くの歯科医院が出てくるが、どこを見て選べばよいのか判断がつかない。
歯科医院のウェブサイトは、それぞれが自院の特徴を説明するために作られています。読み比べても、どの点を比較すればよいのかがわかりにくいのは自然なことです。
この記事では、静脈内鎮静法に対応している歯科医院を探す際に、どのような項目を確認するとよいのかを整理します。特定の医院を推奨するものではなく、ご自身で判断していただくための材料としてお読みください。
なお、静脈内鎮静法そのものの説明については別記事で扱っています。
なぜ対応している医院が限られるのか
静脈内鎮静法は、すべての歯科医院で受けられるものではありません。理由は主に2つあります。
ひとつは、体制と設備が必要になることです。血圧や血中の酸素飽和度を継続して測定する機器、酸素の供給設備、万一に備えた薬剤の準備が求められます。処置中は患者さんの状態を監視し続ける必要があるため、人員の面でも通常の診療とは異なります。
もうひとつは、専門的な知識と技術が必要になることです。鎮静薬の作用を理解し、投与量を調整しながら全身状態の変化に対応する。この判断には訓練が要ります。
こうした条件があるため、対応している医院は限られます。まずこの前提を知っておくと、探す際の見通しが立てやすくなります。
確認したい5つの項目
1. 麻酔を誰が担当するのか
静脈内鎮静法を行う体制には、いくつかのパターンがあります。
処置を行う歯科医師が麻酔も兼ねる場合。麻酔を専門とする歯科医師が別に立ち会う場合。外部から麻酔担当の医師が来て対応する場合。
どのパターンであっても直ちに問題があるわけではありませんが、誰が担当するのかは確認しておく価値のある情報です。特に、処置と麻酔管理を一人で行う場合と、分担して行う場合とでは、体制が異なります。
ウェブサイトに記載がない場合、問い合わせて尋ねることができます。
2. 歯科麻酔に関する資格
日本歯科麻酔学会は、鎮静法や全身麻酔を安全に行える歯科医師を養成するために、認定医制度と専門医制度を設けています。
これらの資格を持つ歯科医師は、大学病院の歯科麻酔科などで専門的な訓練を受けています。参照した情報では、認定医と専門医を合わせて全国で1,600名前後とされており、歯科医師全体から見れば限られた人数です。
資格の有無だけで判断すべきものではありませんが、確認できる客観的な情報のひとつです。
なお、麻酔科の医師(医科)が担当している場合もあります。これも専門的な訓練を受けた立場です。
3. モニタリングの体制
処置中にどのような監視が行われるかは、安全性に直接関わります。
血圧計、血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーター、心電図といった生体監視モニターが用いられているか。処置中に状態を確認する担当者がいるか。
これらはウェブサイトに記載されていることが多い項目です。記載がない場合は、問い合わせで確認できます。
4. 事前の診察と検査の進め方
静脈内鎮静法は、当日いきなり受けられるものではありません。
事前に診察を受け、口腔内の状態と全身の状態を確認したうえで、実施できるかどうかが判断されます。持病や服用中の薬によっては慎重な判断が必要になるためです。
したがって、事前の診察や検査をどのように行っているかは、確認しておきたい項目になります。何回の来院が必要か、どのような検査を行うかを尋ねておくと、通院の見通しが立てられます。
5. 説明を受けられるかどうか
どのような薬剤を使うのか、処置中はどのような状態になるのか、どういったリスクがあるのか、費用はどうなるのか。
これらについて質問したときに、納得できるまで説明してもらえるかどうかは、実際に受診してからの体験にも関わります。
不安が強い方ほど、この点は重視していただきたいところです。説明の分量が多ければよいというものではなく、疑問に対して答えが返ってくるかどうかが判断の材料になります。
保険診療として受けられるかを確認する
静脈内鎮静法が保険診療の対象になるかどうかは、その鎮静に医学的な必要性が認められるかによって判断されます。
あわせて、医療機関が保険診療として取り扱う体制を備えているかによっても扱いが変わります。同じ処置であっても、案内される内容が医院によって異なるのはこのためです。
ご自身の場合がどちらにあたるかは、事前の相談で確認しておくとよいでしょう。保険適用を希望する場合は、その旨を最初に伝えておくと話が進めやすくなります。
大学病院という選択肢
地域の歯科医院のほかに、大学病院や総合病院の歯科口腔外科という選択肢があります。
歯科麻酔を専門とする医師が在籍していることが多く、静脈内鎮静法を実施できる体制が整っている場合があります。全身状態に不安がある方の場合、医科との連携がとりやすいという面もあります。
一方で、受診には紹介状が必要になることが多く、予約から実際の処置までに時間がかかる傾向があります。通院の距離も考慮する必要があります。
どちらが適しているかは、処置の内容、全身状態、待てる期間、通いやすさによって変わります。かかりつけの歯科医院がある場合、そこから紹介を受けるという進め方もあります。
問い合わせで確認できること
受診前に電話やウェブのフォームで確認できることがあります。
静脈内鎮静法に対応しているか。対応している処置の範囲はどこまでか。外科処置のみか、通常の虫歯治療でも可能か。
事前の診察に何回の来院が必要か。実際の処置までにどのくらいの期間がかかるか。
保険診療として受けられる可能性があるか。自費の場合の費用の目安。
麻酔を担当するのはどのような立場の医師か。
当日の所要時間はどのくらいか。付き添いが必要か。
すべてを一度に尋ねる必要はありませんが、気になる点を先に確認しておくことで、受診してから想定と違ったという事態を避けられます。
なお、問い合わせに対する受け答えの印象そのものも、判断の材料になります。不安な点を聞いたときにどう応じてもらえるかは、受診後の体験とある程度つながります。
情報を読むときの注意点
歯科医院のウェブサイトは、患者さんに向けた案内であると同時に、自院の特徴を伝えるためのものでもあります。読む際にいくつか注意しておきたい点があります。
眠っている間にすべて終わる、痛みを感じることはない、といった表現を目にすることがあります。静脈内鎮静法では意識が完全になくなるわけではなく、痛みを抑えるのは局所麻酔の役割です。表現をそのまま受け取ると、実際との差が生じる可能性があります。
効果には個人差があります。効きやすさや記憶の残り方は人によって異なるため、書かれているとおりになるとは限りません。
リスクや副作用についての記載があるかどうかも、確認しておきたい点です。医療行為である以上、副作用が生じる可能性はあります。利点だけでなく注意点も説明されているかは、情報の受け止め方を判断する材料になります。
費用については、記載されている金額に何が含まれるかを確認してください。鎮静の費用と歯科治療そのものの費用は別に発生します。
通いやすさという視点
静脈内鎮静法は一度で完結するとは限りません。事前の診察、処置、その後の経過確認と、複数回の通院が必要になります。処置の内容によっては、鎮静下での治療を複数回行うこともあります。
そのため、通いやすさは無視できない要素です。通院に時間がかかる場所を選ぶと、途中で続かなくなる可能性があります。
また、静脈内鎮静法を受けた日は自分で運転して帰ることができません。公共交通機関でのアクセス、あるいは付き添いの方に送迎を頼めるかどうかも、現実的な判断材料になります。
受診してから合わないと感じた場合
事前にどれだけ調べても、実際に受診してみないとわからないことがあります。
説明の仕方が合わない、質問しづらい、不安を伝えても取り合ってもらえない。こうした場合、別の医院を検討して構いません。
長く通うことになる可能性がある以上、相談しやすいかどうかは重要な要素です。合わないまま無理に続けるより、切り替えたほうが結果的に治療が進むことがあります。
歯科恐怖症学会からお伝えしたいこと
この記事では、確認したい項目を挙げてきました。ただ、これらをすべて満たす医院を探さなければならないという趣旨ではありません。
不安の程度も、必要な処置も、通える範囲も人それぞれです。何を重視するかによって、適した選択は変わります。安全性に関わる体制は確認したうえで、あとはご自身の優先順位で判断していただくのが現実的だと考えています。
そして、探すこと自体が負担になって受診が遠のいてしまっては本末転倒です。完璧な選択をしようとするより、まず問い合わせてみる、相談してみるというところから始めていただければと思います。
歯科恐怖症学会は、歯科治療が苦手な方に対する診療のあり方を研究し、その知見を共有することを目的とした団体です。特定の医院や治療法を推奨する立場ではなく、患者さんがご自身に合った方法を選ぶための判断材料を提供することを役割としています。
まとめ
静脈内鎮静法は、体制と設備、そして専門的な知識と技術を必要とするため、対応している歯科医院は限られます。
医院を探す際に確認したい項目として、麻酔を誰が担当するのか、歯科麻酔に関する資格を持つ医師が関わっているか、モニタリングの体制はどうか、事前の診察と検査をどう進めるか、疑問に対して説明を受けられるかの5点が挙げられます。
保険診療として受けられるかは、医学的な必要性と医療機関の体制の両方によって変わります。事前の相談で確認しておくとよいでしょう。
地域の歯科医院のほかに、大学病院や総合病院の歯科口腔外科という選択肢もあります。紹介状が必要になることが多く時間はかかりますが、体制が整っている場合があります。
ウェブサイトの情報を読む際は、眠っている間にすべて終わるといった表現をそのまま受け取らないこと、効果に個人差があること、リスクの記載があるかを確認することに留意してください。
通いやすさも現実的な要素です。複数回の通院が必要になること、処置当日は自分で運転して帰れないことを踏まえて判断してください。
受診してみて合わないと感じた場合、別の医院を検討して構いません。まずは問い合わせてみるところから始めていただければと思います。
よくある質問
静脈内鎮静法はどこの歯科医院でも受けられますか
受けられません。生体監視モニターなどの設備、酸素や救急薬品の準備、そして鎮静を管理できる知識と技術が必要になるため、対応している医院は限られます。まずは対応の有無を問い合わせて確認してください。
歯科医院を選ぶときに何を確認すればよいですか
麻酔を誰が担当するのか、歯科麻酔に関する資格を持つ医師が関わっているか、処置中のモニタリング体制はどうか、事前の診察をどう進めるか、疑問に対して説明を受けられるかといった点が挙げられます。すべてを満たす必要はなく、優先順位はご自身で判断してください。
歯科麻酔の専門医とはどのような資格ですか
日本歯科麻酔学会が、鎮静法や全身麻酔を安全に行える歯科医師を養成するために設けている制度です。認定医と専門医があり、大学病院の歯科麻酔科などで専門的な訓練を受けた歯科医師が取得しています。麻酔科の医師(医科)が担当している場合もあります。
大学病院と歯科医院ではどちらがよいですか
処置の内容、全身状態、待てる期間、通いやすさによって変わります。大学病院は体制が整っている場合が多い一方、紹介状が必要で予約から処置までに時間がかかる傾向があります。かかりつけの歯科医院から紹介を受けるという進め方もあります。
電話で問い合わせるときは何を聞けばよいですか
静脈内鎮静法に対応しているか、どの処置まで対応できるか、事前の診察に何回必要か、保険診療として受けられる可能性があるか、当日の所要時間と付き添いの要否といった点が挙げられます。すべてを一度に尋ねる必要はありません。
参考文献
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- Safety and efficacy of different sedation protocols in managing dental anxiety in adult patients: a randomized controlled trial.
- Silveira ER, Cademartori MG, Schuch HS, Armfield JA, Demarco FF. Estimated prevalence of dental fear in adults: a systematic review and meta-analysis. Journal of Dentistry. 2021;108:103632.
- 日本歯科医師会. テーマパーク8020「歯科治療の麻酔」.
歯科恐怖症学会編集部
本記事は歯科恐怖症学会に所属する歯科医師の監修のもと制作しています。

・歯科医師
・歯科恐怖症学会専門医
・マリコ歯科クリニック 副院長







