歯がボロボロすぎて歯医者に行けない方へ|恥ずかしさと受診の第一歩

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歯がボロボロすぎて歯医者に行けない方へ|恥ずかしさと受診の第一歩

歯がボロボロすぎて歯医者に行けない方へ|恥ずかしさと受診の第一歩

歯がボロボロになっていることは自分でもわかっている。鏡を見るたびに、なんとかしなければと思う。それでも歯医者の予約が取れない。

理由を突き詰めると、痛みへの恐怖よりも、この状態を見られることへの抵抗が大きいという方が少なくありません。口臭を指摘されるのではないか、不衛生だと思われるのではないか、驚かれるのではないか。そうした想像が、受診の一歩を止めています。

そして時間が経つほど状態は進み、見せることへの抵抗はさらに強くなります。この循環に長く留まってしまう方は、決して珍しくありません。

この記事では、恥ずかしさという感情の背景を整理したうえで、歯科医師が実際に何を見ているのか、長く放置した歯はどこまで治せるのか、最初の受診では何が行われるのかをお伝えします。

歯がボロボロで恥ずかしいと感じる理由

見られることへの抵抗

歯科治療への不安というと痛みが語られがちですが、歯がボロボロすぎて歯医者に行けないという状況では、それとは別の要素が中心にあります。

自分の口の中を他人に見せるという行為そのものへの抵抗です。しかも、明らかに手入れが行き届いていない状態を、専門家に見せることになります。

具体的には、口臭を指摘されるのではないか、歯磨きをしていないと思われるのではないか、生活がだらしないと判断されるのではないか、といった不安として現れます。これらは歯そのものというより、自分自身がどう評価されるかという不安です。

長く放置したという自覚

もうひとつ大きいのが、自分で放置してきたという自覚です。

早く行けばよかったとわかっている。それでも行かなかった。この事実があると、責められて当然だという気持ちが生まれます。そして実際には何も言われなくても、そう思われているのではないかと感じやすくなります。

放置に至った経緯は人それぞれです。仕事が忙しかった、経済的な事情があった、そもそも歯科が苦手だった、最初の一本を治療しないうちに次が悪くなった。どの理由であっても、意志が弱いという話に還元できるものではありません。

歯の状態が自信に影響する

歯がボロボロの状態は、人前で口を開けることをためらわせます。

笑うときに手で口を覆う、人と話すときに距離を取る、写真を避けるといった行動につながることがあります。こうした積み重ねが自信を損ない、それがまた受診への一歩を重くするという面もあります。

歯科医師は実際に何を見ているのか

判断に必要な情報を見ている

歯科医師が診察で見ているのは、臨床的な判断に必要な情報です。

どの歯にどの程度の進行があるか。神経は残せるか。歯を残せるか、残せないか。歯周組織の状態はどうか。噛み合わせはどうなっているか。どの順番で処置するのが適切か。

こうした情報を集めて、治療の計画を立てるための作業を行っています。生活態度を評価するために口の中を見ているわけではありません。

状態が悪いことは珍しくない

歯科医院に来院するのは、何らかの問題を抱えた方です。問題のない状態を見せに来る人はいません。

長く受診していなかった方、治療途中で通院が止まっていた方、状態が進んでいる方。いずれも日常的に対応している範囲です。

口臭についても同様で、口腔内の状態から生じるものであれば、それ自体が診断の手がかりになります。改善すべき対象であって、指摘して責める対象ではありません。

不安があれば伝えてよい

とはいえ、こうした説明で不安が消えるわけではないことも承知しています。

そこでおすすめしたいのは、受診の際に不安を先に伝えてしまうことです。見られるのが恥ずかしい、長く放置してしまった、怒られないか心配だ。そのまま伝えていただいて構いません。

伝えておけば、歯科医院側もその前提で説明の仕方を選べます。予約時の問い合わせフォームや電話で、あらかじめ伝えておくという方法もあります。

長く放置した歯はどこまで治せるのか

状態によって選べる方法は変わる

歯がボロボロの状態でも、治療の選択肢がなくなるわけではありません。ただし、進行の程度によって選べる方法は変わります。

歯の頭の部分が大きく失われていても、根が残っていて周囲の状態がよければ、土台を立てて被せ物をするという方法がとられることがあります。

神経に達している場合は、根の内部を清掃する処置を経てから修復に進みます。この場合、通院回数は増えます。

根の周囲に大きな問題が生じている場合や、歯を支える骨が失われている場合には、その歯を残すことが難しくなります。抜歯を選択したうえで、失った部分をどう補うかを検討することになります。

抜かずに済むかどうか

抜かれるのではないかという不安から受診をためらう方もいます。

歯を残せるかどうかは、実際に見てみないと判断できません。見た目の印象より状態がよいこともあれば、逆のこともあります。レントゲン撮影などの検査を経て判断されます。

なお、抜歯が必要と判断された場合でも、その場ですぐ抜くわけではないことが一般的です。説明を受け、納得したうえで進めることになります。

本数が多い場合

治療が必要な歯が多い場合、優先順位をつけて進めていきます。

痛みや腫れがある部位、進行が進んでいて選べる処置が減ってしまう部位が優先されます。前歯など見た目に関わる部分については、希望が考慮されることがあります。

通院回数と期間は状態によって大きく変わるため、一般化した数字をお伝えすることは適切ではありません。検査を経て立てられた計画のなかで説明を受けることになります。

最初の受診で行われること

初回は検査と説明が中心

最初の受診でいきなり治療が始まるとは限りません。

まず行われるのは、口腔内全体の状態を把握することです。視診とレントゲン撮影によって、どの歯にどの程度の進行があるかを確認します。歯周組織の検査が行われることもあります。

そのうえで、どのような選択肢があるか、どの順番で進めるかの説明を受けます。初回はここまでで終わることも珍しくありません。

痛みや腫れがある場合には、まずその対応が優先されます。

相談だけの受診も可能

治療を受ける決心がつかない段階でも、相談だけという形で受診することができます。

その日は治療をしないと事前に伝えておけば、心の準備がしやすくなります。診療台に座らず、カウンセリングスペースで話を聞くという対応をとっている歯科医院もあります。

口の中を見てもらうかどうかも含めて、その日にどこまで進めるかを相談することができます。

通院が続けられるか不安な場合

長く通うことになりそうだと聞いて、続けられるか不安になる方もいます。

通院の頻度や間隔については相談が可能です。仕事や家庭の事情がある場合は、その旨を伝えておくと計画に反映されやすくなります。

一度の来院で複数の処置をまとめて行うという方法もあります。ただし当日の負担は大きくなるため、どちらを優先するかは相談のうえ決めることになります。

治療への不安が強い場合の選択肢

進め方を相談する

痛みが不安な場合、麻酔の方法や進め方について事前に相談できます。

処置を短い時間で区切る、途中で休憩を入れる、苦しくなったときの合図を決めておくといった取り決めは、事前に相談しておけば対応できることが多くあります。

鎮静法を用いる

不安や緊張が強く、通常の方法では治療を進めることが難しい場合には、鎮静法を用いるという選択肢があります。

笑気吸入鎮静法は、鼻から笑気と酸素の混合ガスを吸入してリラックスした状態をつくる方法です。注射も点滴も必要ありません。

静脈内鎮静法は、腕の静脈から鎮静薬を点滴で投与する方法です。うとうとした状態になり、治療中の記憶が残りにくくなります。処置すべき箇所が多く、一度にまとめて進めたい場合にも用いられることがあります。

歯科治療への強い不安があり通常の方法では治療が困難と判断される場合、鎮静法が保険診療の対象となる可能性があります。判断は診察を経て行われます。

歯科医院の選び方

歯がボロボロすぎて歯医者に行けないと感じている方にとって、どこを選ぶかは重要です。判断の手がかりを挙げます。

幅広い処置に対応しているかどうか。状態が進んでいる場合、虫歯だけでなく歯周組織の問題や欠損部の補綴など、複数の課題が重なっていることがあります。総合的に計画を立てられる体制があると進めやすくなります。

事前のカウンセリングに時間をとっているかどうか。いきなり治療に入るのではなく、話を聞く時間が設けられているかは参考になります。

不安が強い患者さんへの対応について説明があるかどうか。

問い合わせへの対応。予約前に不安な点を尋ねてみて、その受け答えの印象を判断材料にする方法もあります。

もし受診してみて、この歯科医院とは合わないと感じた場合、別の医院を検討して構いません。長く通うことになるからこそ、相談しやすいかどうかは大切な要素です。

歯科恐怖症学会からお伝えしたいこと

歯がボロボロすぎて歯医者に行けないという状態は、恐怖と回避が互いを強め合う循環のなかで生まれます。

不安があるために受診を避ける。避けている間に状態が進む。状態が進んだことで、さらに見せづらくなる。この循環は研究の対象にもなっており、個人の努力不足によって起きているのではなく、構造的に生じやすいものだと理解されています。

つまり、いまの状態に至ったこと自体を責める必要はありません。必要なのは、循環をどこかで断つことです。

そのための一歩は、治療を始めることでなくて構いません。相談してみる、問い合わせてみる、どんな選択肢があるか聞いてみる。そこまでで十分です。こうして情報を調べている時点で、すでに動き始めています。

歯科恐怖症学会は、歯科治療が苦手な方に対する診療のあり方を研究し、その知見を共有することを目的とした団体です。患者さんがご自身に合った方法を選ぶための判断材料を提供することを役割としています。

まとめ

歯がボロボロすぎて歯医者に行けないという状況の中心には、痛みへの恐怖よりも、この状態を見られることへの抵抗があります。口臭を指摘されるのではないか、不衛生だと思われるのではないかという不安は、歯そのものではなく自分がどう評価されるかという不安です。

歯科医師が診察で見ているのは、どの歯にどの程度の進行があるか、残せるか、どの順番で処置するかといった判断に必要な情報です。歯科医院に来るのは何らかの問題を抱えた方であり、状態が進んでいることは日常的に対応している範囲です。

長く放置した歯でも、治療の選択肢がなくなるわけではありません。ただし進行の程度によって選べる方法は変わります。残せるかどうかは検査を経て判断されます。

最初の受診は検査と説明が中心で、初回はそこまでで終わることも珍しくありません。相談だけという形で受診することもできます。

不安があることを最初に伝えていただいて構いません。それだけで進み方が変わることがあります。

歯科恐怖症学会では、歯科治療が苦手な方に対応している歯科医師の情報を掲載しています。あわせてご覧ください。

よくある質問

歯がボロボロだと歯医者に驚かれませんか

歯科医院に来院するのは何らかの問題を抱えた方であり、状態が進んでいることは日常的に対応している範囲です。歯科医師が見ているのは治療計画を立てるために必要な情報で、生活態度を評価しているわけではありません。不安がある場合は最初に伝えていただいて構いません。

口臭を指摘されるのが怖いのですが

口腔内の状態から生じる口臭は、診断の手がかりのひとつとして扱われます。改善すべき対象であって、指摘して責める対象ではありません。気になる場合は、その不安も含めて相談していただければと思います。

ボロボロの歯でも抜かずに治せますか

進行の程度によります。根が残っていて周囲の状態がよければ、土台を立てて被せ物をする方法がとられることがあります。一方、歯を支える骨が失われている場合などは残すことが難しくなります。判断には検査が必要で、見た目の印象と実際の状態が異なることもあります。

何年も放置していますが今からでも治療できますか

期間が空いていることを理由に断られることはありません。長く受診していない方の対応に慣れている歯科医院も多くあります。放置していた期間の長さによって選べる方法は変わりますが、受診を再開するのに遅すぎるということはありません。

治療が怖くて決心がつきません

相談だけという形で受診することができます。その日は治療をしないと事前に伝えておけば、心の準備がしやすくなります。不安が特に強い場合は、笑気麻酔や静脈内鎮静法を用いるという選択肢もあります。まずはどのような方法があるかを聞くところから始めてください。

参考文献

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  7. 日本歯科医師会. テーマパーク8020「歯科治療の麻酔」.

歯科恐怖症学会編集部

本記事は歯科恐怖症学会に所属する歯科医師の監修のもと制作しています。