歯医者の笑気麻酔とは|効果と副作用、静脈内鎮静法との違いを解説

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歯医者の笑気麻酔とは|効果と副作用、静脈内鎮静法との違いを解説

歯医者の笑気麻酔とは|効果と副作用、静脈内鎮静法との違いを解説

歯科治療が苦手だと相談したときに、笑気麻酔という方法を提案された。名前は聞いたことがあるけれど、実際にどうなるのかがわからない。ガスを吸うと聞くと、それ自体が少し不安に感じる。

笑気麻酔は、正式には笑気吸入鎮静法と呼ばれる方法です。鼻にマスクを装着し、笑気と酸素の混合ガスを吸入することで、不安や緊張をやわらげた状態で歯科治療を受けられるようにします。意識ははっきりしたまま保たれ、会話もできる状態です。

歯科で用いられる鎮静法のなかでは比較的手軽で、対応している歯科医院も多い方法です。ただし得られる効果には限りがあり、適さない方もいます。

この記事では、笑気麻酔がどのような方法なのか、どのくらいの効果が期待できるのか、起こりうる副作用や注意点は何かを整理します。あわせて、静脈内鎮静法との違いや使い分けについても解説します。

歯科で用いる笑気麻酔とは

笑気麻酔の正式名称と仕組み

笑気麻酔は、正式には笑気吸入鎮静法といいます。笑気とは亜酸化窒素という気体の別名で、これを吸入した人が笑ったような表情になることから、この呼び名がついたとされています。

歯科で用いる場合は、笑気の濃度を低く抑え、高い濃度の酸素と混ぜて吸入します。空気中の酸素濃度がおよそ21パーセントであるのに対し、笑気麻酔では酸素の割合をそれより高く設定するため、酸素の面ではむしろ通常の呼吸より豊富な状態になります。

鼻にマスクを装着し、通常どおり鼻で呼吸するだけで効果が現れます。注射も点滴も必要ありません。注射が苦手な方にとって、この点は大きな利点になります。

笑気麻酔を受けているときの状態

笑気麻酔を受けている間の状態は、ふわふわした感じ、体が温かく感じる、少しぼんやりするといった表現をされることが多くなります。

意識ははっきりと保たれており、歯科医師やスタッフとの会話もできます。眠ってしまうわけではなく、指示に応じて口を開けることもできます。この点が、より深い鎮静が得られる静脈内鎮静法との大きな違いです。

治療中の記憶についても、笑気麻酔では基本的に残ります。健忘作用はほとんど期待できないため、覚えていない状態を望む場合には別の方法を検討することになります。

効果が現れるまでと覚めるまでの時間

笑気麻酔の特徴のひとつが、効果の発現と消失がともに速いことです。

吸入を始めるとほどなく効果が現れ、治療の準備をしている間に落ち着いた状態になります。治療が終わって吸入を止めれば、比較的短い時間で元の状態に戻ります。

これは笑気が体内でほとんど分解されず、呼気から速やかに排出されるという性質によるものです。肝臓や腎臓に負担をかけにくいという点も、この性質と関係しています。

回復が早いため、静脈内鎮静法のように長時間院内で休む必要は通常ありません。ただし、吸入を止めたあとしばらくは酸素を吸って様子を見るのが一般的です。

笑気麻酔で得られる効果

不安や緊張がやわらぐ

もっとも中心となる効果が、不安や緊張の軽減です。

歯科治療のときに気分が悪くなる、血圧が上がるといった反応の背景には、恐怖心や緊張があることが少なくありません。笑気麻酔でこの緊張をやわらげることで、こうした反応が起こりにくくなることが期待されます。

歯を削る音や器具の感触が気になって落ち着かないという方にとっても、その気になり方が和らぐという形で役立つことがあります。

痛みを感じにくくなる作用もある

笑気には、鎮静作用に加えて弱い鎮痛作用があるとされています。この点は、痛みを取る働きをほとんど持たない静脈内鎮静法とは異なる特徴です。

ただし、この鎮痛作用だけで歯を削る、抜くといった処置の痛みを抑えられるわけではありません。痛みを伴う処置を行う場合には、通常どおり局所麻酔を併用します。

役立つのは、局所麻酔の注射そのものの痛みに対してです。笑気を吸入しながら局所麻酔を行うことで、注射時の抵抗感が軽くなることが期待されます。痛みを取るための麻酔が痛いという状況をやわらげる、という使い方です。

嘔吐反射への効果は限定的

口の中に器具が入ると強い吐き気を催してしまう嘔吐反射に対して、笑気麻酔が用いられることがあります。緊張がやわらぐことで反射が起こりにくくなる場合があるためです。

ただし、反射が強い方の場合、笑気麻酔だけでは十分でないことがあります。また笑気麻酔は鼻から吸入する方法であるため、鼻での呼吸がしづらい方には向きません。

嘔吐反射が強く治療が進められない場合には、より深い鎮静が得られる方法が検討されることになります。

笑気麻酔と静脈内鎮静法の違い

歯科で用いられる鎮静法として、笑気吸入鎮静法と静脈内鎮静法はしばしば比較されます。主な違いを整理します。

投与の方法が異なります。笑気麻酔は鼻からガスを吸入する方法で、静脈内鎮静法は腕の静脈に点滴を確保して薬を投与する方法です。

鎮静の深さが異なります。笑気麻酔では意識がはっきり保たれ会話もできますが、静脈内鎮静法ではうとうとした状態になります。

記憶の残り方が異なります。笑気麻酔では治療中の記憶が残りますが、静脈内鎮静法では健忘作用によって記憶が残りにくくなります。

事前の準備と所要時間が異なります。笑気麻酔では飲食制限が緩やかで、治療後も長く休む必要は通常ありません。静脈内鎮静法では数時間前からの飲食制限が必要で、治療後も院内で休んでから帰宅します。

対応している医院の数が異なります。笑気麻酔のほうが導入している歯科医院は多く、静脈内鎮静法には生体監視モニターなどの設備と専門的な知識が求められます。

おおまかに言えば、手軽さでは笑気麻酔、効果の深さでは静脈内鎮静法ということになります。軽度から中等度の不安には笑気麻酔、強い恐怖がある場合や長時間の処置には静脈内鎮静法が検討される、という使い分けが一般的です。

 

 

 

 

 

子どもの歯科治療における笑気麻酔

笑気麻酔は、小児歯科でも用いられることがあります。

注射や点滴を必要とせず、鼻でマスクをつけて呼吸するだけで済むため、お子さんにとって受け入れやすい方法とされています。ふわふわした感じを楽しく感じるお子さんもいます。

ただし、鼻でしっかり呼吸できることが前提になります。マスクを嫌がって外してしまう場合や、口呼吸が習慣になっている場合には効果が得られにくくなります。また、恐怖のあまり泣いてしまっている状態では、そもそも吸入が難しくなります。

年齢や性格、その日の状態によって適するかどうかは変わります。実際に使用するかどうかは、歯科医師と相談のうえ判断されることになります。

笑気麻酔の副作用と注意点

起こりうる副作用

笑気麻酔は比較的安全性の高い方法とされていますが、副作用が起こらないわけではありません。

吸入中や吸入後に、吐き気や気分の悪さを感じることがあります。頭痛やめまい、ふらつきが現れることもあります。これらは多くの場合一時的で、時間の経過とともに落ち着きます。

笑気の濃度が高すぎると、気分が悪くなったり落ち着かなくなったりすることがあります。このため、吸入中は濃度を調整しながら進められます。効きすぎていると感じたら、その場で伝えてください。

食事をしてすぐの状態では吐き気が出やすいとされているため、直前の食事は控えるよう案内されることがあります。具体的な指示は受診先で確認してください。

笑気麻酔が適さない場合

次のような場合には、笑気麻酔を用いることが難しい、あるいは慎重な判断が必要とされます。

鼻での呼吸がしづらい方。鼻づまりがある日や、鼻の疾患がある場合、慢性的に口呼吸になっている場合が該当します。ガスが十分に届かないため、効果が得られません。

体の中に閉じられた空間がある状態。笑気はそうした空間に入り込んで内圧を高める性質があるとされているため、中耳や副鼻腔、腸管などに関わる状態がある場合には注意が必要とされています。

妊娠の可能性がある方や妊娠中の方。特に妊娠初期については慎重な判断が求められます。妊娠の可能性がある場合は、その旨を事前にお伝えください。

このほか、呼吸器や循環器に関わる疾患がある方、精神科領域の治療を受けている方についても、状態によっては相談のうえ判断されることになります。

笑気には毒性がないので副作用はないという説明を見かけることがありますが、医療行為である以上、適応の判断は必要です。持病や服用中の薬、体調については事前にお伝えください。

治療後の過ごし方

笑気麻酔は回復が早い方法ですが、吸入を止めた直後はふらつきが残ることがあります。

多くの歯科医院では、吸入終了後にしばらく酸素を吸って様子を見てから帰宅となります。医院の方針によって、当日の運転を控えるよう案内される場合もあります。予約の際に確認しておくと、当日の予定を組みやすくなります。

笑気麻酔の保険適用について

笑気吸入鎮静法は、歯科診療のなかで保険診療として行われることがある処置です。

適用されるかどうかは、その鎮静に医学的な必要性が認められるかによって判断されます。歯科治療への強い不安や嘔吐反射があり、通常の方法では治療を進めることが難しいと判断される場合には、対象となることがあります。

一方で、自費診療として行う治療に伴って用いる場合には、笑気麻酔も自費として扱われます。また、リラックスして受けたいという希望だけでは、保険の対象にはなりません。

医院によって扱いが異なる場合もありますので、事前の相談の段階で確認しておくとよいでしょう。

なお本記事では、具体的な金額の記載は行っていません。費用は医療機関や治療内容によって異なるため、受診先でご確認ください。

笑気麻酔で不十分だった場合

笑気麻酔を試したものの、効果を感じられなかったという方もいます。

考えられる理由はいくつかあります。鼻での呼吸が十分にできていなかった場合、緊張が強すぎて効果が追いつかなかった場合、そもそも恐怖の程度に対して笑気麻酔の鎮静の深さが足りていなかった場合などです。

笑気麻酔が効かなかったからといって、他の方法も効かないということにはなりません。静脈内鎮静法は投与の経路も作用の仕組みも異なるため、別の結果になることがあります。

前回どのような状況だったかを伝えることで、次に適した方法を検討しやすくなります。効かなかったという経験も、判断の材料として役立ちます。

歯科恐怖症学会からお伝えしたいこと

歯科治療への不安に対して、笑気麻酔は入口として選びやすい方法です。注射も点滴も必要なく、回復も早いため、試してみるハードルが比較的低いためです。

一方で、笑気麻酔で得られる効果には限りがあります。意識ははっきり保たれ、記憶も残ります。強い恐怖がある方にとっては、これで十分とは感じられない場合もあります。

大切なのは、期待する状態と方法が合っているかどうかです。少し緊張をやわらげたいのか、治療中のことを覚えていたくないのか。求めるものによって、適した方法は変わります。

歯科恐怖症学会は、歯科治療が苦手な方に対する診療のあり方を研究し、その知見を共有することを目的とした団体です。患者さんがご自身に合った方法を選ぶための判断材料を提供することを役割としています。

まとめ

笑気麻酔は正式には笑気吸入鎮静法といい、鼻にマスクを装着して笑気と酸素の混合ガスを吸入することで、不安や緊張をやわらげる方法です。意識ははっきりと保たれ、会話もできます。

効果の発現と消失がともに速く、注射や点滴を必要としないという手軽さがあります。弱い鎮痛作用もあるため、局所麻酔の注射時の抵抗感を軽くする目的でも用いられます。

一方で、鎮静の深さは静脈内鎮静法ほどではなく、治療中の記憶も残ります。鼻での呼吸がしづらい方には効果が得られにくく、妊娠中の方や体の中に閉じられた空間がある状態の方などには慎重な判断が必要です。吐き気やめまいといった副作用が現れることもあります。

どの方法が適しているかは、恐怖の程度や治療内容によって変わります。まずは相談だけでも受けてみることをおすすめします。診察を受けたからといって、その日のうちに治療を始めなければならないわけではありません。

歯科恐怖症学会では、歯科治療が苦手な方に対応している歯科医師の情報を掲載しています。あわせてご覧ください。

よくある質問

笑気麻酔を受けると眠ってしまいますか

眠ってしまうことは通常ありません。意識ははっきりと保たれ、歯科医師やスタッフとの会話もできます。ふわふわした感じや体が温かく感じるといった状態になりますが、指示に応じて口を開けることもできます。

笑気麻酔をすれば治療の痛みは感じませんか

笑気には弱い鎮痛作用がありますが、それだけで歯を削るなどの処置の痛みを抑えられるわけではありません。痛みを伴う処置では局所麻酔を併用します。笑気麻酔が役立つのは、局所麻酔の注射そのものへの抵抗感を軽くする場面です。

笑気麻酔の後はすぐに帰れますか

笑気は体内でほとんど分解されず速やかに排出されるため、回復は比較的早い方法です。ただし吸入終了後にしばらく酸素を吸って様子を見てから帰宅となるのが一般的です。当日の運転については医院の方針によって案内が異なりますので、事前にご確認ください。

子どもでも笑気麻酔は受けられますか

小児歯科でも用いられることがあります。注射や点滴を必要としないため受け入れやすい方法ですが、鼻でしっかり呼吸できることが前提になります。マスクを嫌がる場合や泣いてしまっている状態では効果が得られにくくなります。年齢や状態によって適するかは変わりますので、歯科医師にご相談ください。

笑気麻酔と静脈内鎮静法はどちらを選べばよいですか

恐怖の程度と治療内容によって変わります。軽度から中等度の不安であれば笑気麻酔が、強い恐怖がある場合や長時間の処置では静脈内鎮静法が検討されることが一般的です。治療中のことを覚えていたくないという希望がある場合は、健忘作用のある静脈内鎮静法が選択肢になります。

参考文献

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  6. 日本歯科医師会. テーマパーク8020「歯科治療の麻酔」.

歯科恐怖症学会編集部

本記事は歯科恐怖症学会に所属する歯科医師の監修のもと制作しています。