皆さんは、歯医者さんに行きたいけれど、怖い、不安だと感じていませんか?
「痛いんじゃないか」「何をされるかわからない」「治療の音が苦手」など、歯科治療に対する恐怖心は人それぞれです。もしかしたら、過去のつらい経験が原因かもしれません。
そんな「歯科恐怖症」を抱える方は、決して珍しくありません。実は、日本人の多くが歯科治療に何らかの不安を感じていると言われています。しかし、恐怖心から治療を先延ばしにしてしまうと、虫歯や歯周病が進行し、より大変な治療が必要になってしまうことも。
でも、安心してください。今は、歯科恐怖症を抱える方でも安心して治療を受けられるように、さまざまな工夫や治療方法が導入されています。今回は、そんな歯科恐怖症を克服し、笑顔で治療に臨むためのヒントをお届けします。
歯科恐怖症は、単なる「歯医者嫌い」とは異なり、強い不安感や動悸、冷や汗などの身体的な症状を伴うこともあります。その原因は、過去の治療での痛みや不快な経験、あるいは周囲の人の話を聞いてしまうことなど、多岐にわたります。この恐怖心から歯科医院へ行くことをためらってしまうと、どうなるでしょうか。初期の虫歯は痛みを感じることが少なく、気づかないうちに進行してしまいます。治療を先延ばしにしている間に、歯の神経まで達してしまうと、抜歯が必要になるケースも出てきます。また、歯周病も静かに進行し、気づいたときには手遅れになることも。
このように、治療を後回しにすることは、結果的にご自身の歯の健康を損ない、さらに大掛かりな治療や費用が必要になるリスクを高めてしまうのです。しかし、正しい情報を知り、自分に合った治療方法を見つけることで、この悪循環を断ち切ることができます。

歯科恐怖症の治療方法として特に効果的なのが「静脈内鎮静法」です。これは、点滴から鎮静薬を投与することで、まるで眠っているかのようなリラックスした状態で治療を受けられる方法です。
どのような状態になるの?
完全に意識を失うわけではありませんが、ウトウトとした状態になり、痛みや治療の音、器具の振動などをほとんど感じなくなります。治療中の記憶もほとんど残らないことが多いため、「気づいたら治療が終わっていた」という感覚になります。
メリット
- 恐怖心から解放される: 治療中の不安や恐怖を感じることなく、リラックスして治療に臨めます。
- 短時間で広範囲の治療が可能: 集中治療が難しかった方も、一度に多くの治療を終えることができます。
- 嘔吐反射が強い方にも有効: 喉に器具が入ることに強い不快感を感じる方も、この治療方法で楽になります。
デメリット
- 全身状態のチェックが必要: 持病がある方は事前に医師と相談が必要です。
- 治療後の注意: 鎮静薬の影響が残るため、当日の車の運転や危険を伴う作業は避ける必要があります。
2. 笑気吸入鎮静法
もう一つの歯科恐怖症の治療方法として、「笑気吸入鎮静法」があります。これは、甘い香りのするガス(笑気ガス)を鼻から吸入することで、リラックス効果を得る方法です。
どのような状態になるの?
お酒を飲んで少しフワフワしたような、心地よい気分になります。意識は保たれるため、歯科医師とコミュニケーションを取りながら治療を受けられます。
メリット
- 安全性が高い: 笑気ガスの作用は体外にすぐ排出されるため、治療後すぐに普段の状態に戻れます。
- 小さなお子さんにも使用可能: 恐怖心を持つお子さんの治療にも適しています。
デメリット
- 効果に個人差がある: 人によっては効果をあまり感じない場合もあります。
- 点滴ではないため、効果が限定的: 重度の歯科恐怖症の方には静脈内鎮静法の方が効果的です。
まずは一歩踏み出して、医療機関を受診ください。
歯科恐怖症は、決して恥ずかしいことではありません。多くの方が同じ悩みを抱えています。大切なのは、その悩みを一人で抱え込まず、専門の医療機関に相談することです。
今回ご紹介した静脈内鎮静法や笑気吸入鎮静法以外にも、歯科医院によっては、時間をかけたカウンセリングや、痛みを最小限に抑える麻酔技術など、患者さんの不安を和らげるための工夫がなされています。
「まずは相談だけでも」という気持ちで、一歩踏み出してみませんか?きっと、あなたの恐怖心に寄り添い、最適な歯科恐怖症の治療方法を提案してくれるはずです。

・歯科医師
・歯科恐怖症学会専門医
・マリコ歯科クリニック 副院長
